中小企業に求められるコンプライアンス
中小企業は大企業と比べ、資金や人材に余裕が少なく、経営者がコンプライアンス経営の意識を持っていたとしても、具体的に実現するための人員や資金を振り向けることが困難な場合が多いと思われます。
又、コンプライアンスに関する情報が十分では無いため、いかにしてコンプライアンスの態勢を整備したらよいのかがよく分からないケースも多いのではないかと思われます。
とはいえ、マスコミ報道された食品偽装問題がミートホープや赤福など中小企業で発生しており、中には経営を断念せざるを得ないケースも出ています、従って、コンプライアンスは大企業だけのものではなく、中小企業は中小企業なりの、大企業とは違うやり方でコンプライアンス態勢を構築する必要があるのです。
2010年秋に発行が予定されているISO26000は社会的責任を規格化したものですが、その中で、大企業から見た取引先(もちろん中小企業も含まれます)に対しても、社会的責任を全うできる態勢づくりを求めています。つまりこれからは、中小企業と言えども、コンプライアンス態勢の整備を疎かにしていては、大企業との取引が難しくなる訳です。
大企業と中小企業
大企業 中小企業
専門部署 コンプライアンス部など 総務部兼務
担当者 コンプライアンスオフィサー 総務部員兼務
資金・要員 余裕がある 余裕が無い
一人の業務範囲 狭い(専門的) 広い(広角的視野)
経営者との距離 遠い(意向が見えない) 近い(意向が伝わる)
体制 自前で調達 外注がしやすい
経営者のスタンス
中小企業の特長の一つは、経営者と社員が近くにいることです。つまり経営者の行動が社員からよく見えるわけであり、経営者の姿勢が会社全体に大きな影響を与えます。
◎社長の出社が重役出勤である。
・・・当然、社員の出社時間も乱れがちになり、次第に取引先との約束時間などもルーズになっていきます。
◎社長が、仲間や家族との遊興費を交際費処理している。
・・・当然、社員も会社備品の私的流用やコスト意識の希薄化が進み、労働生産性に対する意識も低下していきます。
◎社長が愛人を秘書に使っている。
・・・お気に入りの人間を重用する雰囲気は、そのうち業務能力で人を判断するのではなく、追従タイプの人物を重用することにつながり、社員のやる気をそぐ結果となります。
一方
◎社長が誰よりも早く出社し、雑用を片付けている。
・・・朝から社内に良い緊張感が生まれます。出社してくる社員に明るく朝の挨拶を続けていると、社員の外部への応対も明るくはっきりとしたものになります。
◎社長が小さな金でもけじめをはっきりしている。
・・・当然、社員も金銭感覚が鋭くなり、仕事に対するコスト意識も向上していきます。
◎社長が身内を重用しない。
・・・中小企業では難しい点ですが、実力のある社員が重用されていれば、当然社内に良い緊張感が生まれ、社員のやる気が向上していきます。
◎社長がコンプライアンス意識が高い。
・・・社長自らが、常に社内規則などを確認しながら物事に対応していると、必然的に社員にもその意識が伝染し、事故が起こった場合などにも、隠したりせず適切な対応がとれる社風が形づくられます。
これらは極端な事例ですが、中小企業においては特に社長のスタンスが重要です。