会社設立とコンプライアンス

会社設立作業

これから会社を立ち上げようと考えていらっしゃる方へ、必要な作業を書いておきます。尚、以下の事例は自分で全額出資して株式会社をスタートする場合です。

1.会社名を決める

 会社名を考えたら、登記しようとしている法務局に行って「類似商号調査のための閲覧申請書」を提出し、同じ名前の会社が無いか調べます。無料です。

2.事業目的を決める

 事業目的は、公序良俗及び法令に反するもの以外は何を書いてもよいので、近い将来に自分がやりたいと思う事柄は幅広く書いておきましょう。そうしたほうが、事業目的の追加変更登記をする手間が省けます。定款や会社登記簿に書いてあるからといって、今すぐ全ての事業をやっていなければならないということはありません。又、その事業が免許が必要な場合であっても、実際に免許を取得してからその事業を行えば良いのです(例えば貸金業や不動産仲介業)。といっても、大企業並みに百もの事業目的が書いてある新設会社は返って信用されないでしょうから、関連ある内容で十くらいが適切でしょう。尚、この事業目的の書き方に制限があるため、書き上げた段階で最寄りの法務局に行き、確認してもらうのが良いでしょう。

3.本店所在地を決める

 あとで何度も変更しなくともよいように、例えば今アパート住まいの場合でそこを事務所にする場合でも、実家など移動する可能性が少ない場所にしましょう。但しあまり遠隔地だと不便ですし、信用にもかかわるので、慎重に決定します。

4.事業年度を決める

 個人営業の確定申告のように、1月から12月までと決まっているわけではありません。自由に決めることができます。といって一般的な12月とか3月にすると、依頼する税理士さんの繁忙期にぶつかりいやがられます。自分の業務の一番暇そうな時期を、税理士さんと相談してきめましょう。

5.機関設計をする

 取締役が自分ひとりでよいのか、一緒に仕事する妻や兄弟を取締役にするのか、取締役会を設置するのか(この場合は最低3名の取締役と監査役1名が必要です)などを考慮して決定します。小会社といえどもしっかりした運営をする為には、定期的な取締役会の開催は欲しいところですから、最低3名の取締役と1名の監査役は選任しましょう。

6.資本金額を決める

 1円会社が話題になったことがあります。もちろん現在は資本金額の規制はありませんので、いくらでも設立自体はできますが、会社を運営するためには当然経費がかかります。特に初めのうちは什器備品をそろえる必要性や、十分な売り上げが見込めないなど、それ相応の資金が無いと運営ができません。事業規模にもよりますが、以前の有限会社の最低資本金300万円はほしいところです。

7.会社の印鑑をつくる

 最低限でも、会社代表印が登記のときに必要になりますので作成します。一般的には、一緒に銀行印・角印も作成したほうが良いでしょう。

8.定款をつくる

 定款とは、会社の基本原則を定める文書のことで、国で言えば憲法にあたります。定款がないと会社登記もできません。定款に記載する内容は法令で定められており、そのうち特に「絶対的記載事項」といわれる①商号、②目的、③本店所在地、④設立に際して出資される財産およびその最低額、⑤発起人の氏名及び住所 の5項目は書いていないと公証人の認証も受けられません。 そのほか、「相対的記載事項」「任意的記載事項」がありますが、インターネットで見本をみることができますので、参考にされると良いでしょう。

9.定款の認証を受ける

 出来上がった定款を最寄りの公証人役場に持っていき、法律的に有効な文書にするため認証してもらいます。この経費は約10万円近くかかりますが、電子認証制度を利用すると4万円が不要になります。電子認証制度の利用はお近くの行政書士に相談して下さい。

当事務所は電子定款に対応しておりますので、印紙代4万円は不要です。

10.資本金を振込み、払込証明書を作成する。

 発起人個人名の口座を開設し、振込でその口座に資本金を入金します。その通帳の表紙と表紙の裏面(1ページ目)、入金が記載されているページをコピーして払込証明書にセットします。

11.登記申請する

 登記申請書を作成し、添付書類を準備します。添付書類は①定款、②払込証明書、③取締役会議事録(代表取締役を選任します。定款上に代表取締役を明記しておくと、この議事録は不要で、「議事録は定款の記載に代える」と登記申請書に書けば大丈夫です。)、④就任承諾書(取締役の人数分)、⑤取締役の印鑑証明書 です。間違いが無いことを確認したら、15万円分の収入印紙を貼り、本店所在地を管轄する法務局に申請します。

12.各種届出をする

 税務署、都道府県税事務所、役場、社会保険事務所、労働基準監督署、ハローワークに所定の届出をします。詳細な届出書類はそれぞれの役所で確認してください。

会社設立時のコンプライアンス

会社設立当初は、細かな作業を全て代表がやらねばならないケースも多いと思います。その状況でコンプライアンスの態勢整備は無理だろうと考えがちですが、社員が入ってくる前に最低限の規定は作成しておく必要があります。そうしないと、社員が入ってきて営業活動が本格化してくると、経費支払いも増大し、日々の業績管理に焦点が移ってしまうからです。もちろんその段階でコンプライアンスの担当者がいれば平行して態勢整備をすることも可能でしょうが、現実にはその余裕もないという事が多いでしょう。

最低限の規定は以下の通りです。

1.倫理規定

 社是や倫理綱領などです。これは正に創業者の気持ちのこもったものでなければ意味がないので、書式集からまる写しするのではなく、自分の気持ちをこめて書きあげてください。

2.人事総務関連規程

 就業規則、情報管理規程、個人情報保護規程、経理規程などです。これらは項目も多いので書式集から書き写すことも必要かと思いますが、大企業のものをそのまま持ってくることは避けるべきです。大企業の就業環境と中小企業の環境は全く違います。法令に違反した就業規則は作れませんが(労基署で受けてもらえません)、時間や休日は大企業並みには行きません。規則は規則、実態は別という過去のやり方だと、新しい感性を持った社員から就業規則違反と指摘されかねません。項目数の多さではなく、社員数十名くらいまでの実態を見越して現実的な規程にする必要があります。

3.営業関連規程

 当面は簡単な手順書程度で十分です。何もないとバラバラな動きになるかも知れませんので、最低限のものだけつくります。細かな営業マニュアルは体制が整ってから作成しても遅くありません。


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