コンプライアンスの体制と態勢

一般的にはコンプライアンス「体制」と書かれることが多いようです。しかし、コンプライアンス体制というと、組織の形とか、担当者の配置とか、どちらかというと社内体制の中のコンプライアンスに関する部署というイメージが強いと思います。 一方、コンプライアンス「態勢」というと、コンプライアンスに対する考え方だとか、体制よりもっと幅広い対応力などに比重が置かれた概念です。「体制」もその中に含みますが、それにプラスして、経営者の取組姿勢・社員の意識・会社の雰囲気・規則類の整備状況・実際に規則類を徹底するための活動状況など、より幅広いコンプライアンスに対応するための必要な概念を表している言い方です。
コンプライアンス経営を目指すためには、コンプライアンス「態勢」整備が何より大切です。

体制の作り方

中小企業は人材や資金面で大企業のような余裕が無い場合が多いです。その中で必要なコンプライアンス態勢を整備するためには、最低限の体制が必要となります。一つの例として、会社の規模に応じた体制作りの目安を示します。

社員数

10人       社内    総務・経理担当が兼務する

          社外    顧問税理士に依頼する

50人       社内    コンプライアンス専任担当を1名おく

          社外    専門コンサルタントに依頼する

100人      社内    コンプライアンスと内部監査の専任担当を1名おく

          社外    専任コンサルタントに依頼する。弁護士と顧問契約する

200人以上   社内    コンプライアンスと内部監査の専任担当を2名以上おく

          社外    監査法人に委託する

上記の目安は業界が受ける規制の強さにも影響されます。例えば金融商品取引法では、一種金商業者や投資運用業者の場合、社員数10名でも専任のコンプライアンス担当者を求められます。

規模の大小に関わらず中小企業に共通して言えることは、社長が全社員に対し、コンプライアンスの重要性を自ら示すことが大切です。

担当者の選任

フロントオフィスとバックオフィス、つまり営業の第一線と総務経理担当は、10名以上の社員がいる会社ではおそらく分離されているものと思います。やはり、営業の第一線は営業目標を抱え、様々な取引先との様々な交渉を持ち、その中でコンプライアンス意識を持つことはもちろん大切ではありますが、「理屈では分かるけれどそうは言っても・・・」という状況も多いと思います。

その点、総務経理の担当は直接の数字目標の責任を負っていない場合が多いでしょうから、業務のチェック役としてのコンプライアンス担当を務めるのに向いていると思います。但し、往々にして営業担当者の声が大きく、総務経理担当の話を聞いてもらえないという事もあり得ますので、その場合も社長のリーダーシップが大切です。

専任の配置

100名単位の社員を抱えるようになったらコンプライアンスの専任担当者はなんとしても欲しいところです。おそらくこの段階では内部監査の担当も兼務する場合が多いかもしれません。この規模になると総務経理の中に契約書チェックなどの法務的な担当者もいるでしょうから、法務担当と連動して顧問弁護士との窓口を担当するのが良いと思います。

コンプライアンス・ホットライン

マスコミ報道されている有名な中小企業の不祥事は、殆ど内部通報(告発)により発覚しています。一昔前であれば、仮に食品偽装の現場に居合わせても自分たちの生活が優先で、必要悪として見逃されたのかもしれませんが、社会環境や意識の変化に伴い、又インターネットの普及や公益通報者保護法施行など法整備も後押しして、最近は内部告発が比較的簡単に行われるようになりました。コンプライアンス体制作りの重要な要素の一つにコンプライアンス・ホットライン(通報窓口)の開設があります。内部通報は禁止してもなくなることはありませんから、それならばいっそ、通報窓口の開設を高らかに宣言し、内部通報を受けることのない会社体質に変えていくことに尽力した方が、結果的に利益が大きいのは言うまでもありません。

開設する場合の重要なポイントは以下の通りです。

①仕返しをされないという宣言をする

②秘密を守るという宣言をする

③信頼ある窓口を開設する

  中小企業の場合お互いの関係が近いですから、秘密を守るといってもなかなか現実的ではないと思います。その場合、社内に窓口を作るのではなく、弁護士に依頼するとか、専門業者に委託したほうが実効性があります。


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