複雑な戸籍請求について
祖父母名義の不動産の名義を変える場合など、世代が3代・4代にまたがる相続関係を証明する為の戸籍請求は、大変複雑です。
その理由は
①戦前は一般的に子供が多く、そのそれぞれが又子供を持っているので、相続権者の数が現在より概ね多い。
②昔は養子縁組が多く、相続関係が複雑になりやすい。
③何回かの民法改正で、その都度相続権者の定義が変わっている。
などです。
複雑な戸籍請求をする場合に留意する点
- 相続関係図を作成しながら、戸籍請求作業を行う。
- 戸籍簿にでてくる人ごとに、出生から死亡までの連続を確認しながら、作業する。
- 時間をおかずに、速やかに戸籍請求を続ける。
- 昭和55年末以前に発生した相続は、兄弟姉妹の代襲に注意する。
以下、個別にご説明します。
◎相続関係図を作成しながら、戸籍請求作業を行う
3世代以上に亘る相続関係を手繰っていく作業は、かなりややこしいので、新しい戸籍簿が役所から届く都度、相続関係図を作成していく必要があります。
そうしないと、途中で訳が分からなくなってしまいます。
例えばある人に5人の子供がいることがわかったら、ひとまず相続関係図にその5人の名前を載せます。
それから、その5人の戸籍を全て請求し、現在の状況が判明したらそれを相続関係図に書き加えます。
以下は、相続関係図の見本です。
相続関係図の見本この見本は、シンプルな相続関係ですが、複雑な相続関係になると、用紙は最低でもA3版。
それも何枚も使わないと書ききれなくなります。
1枚の紙に書こうとすると、畳2畳くらいの大きさになることもあります。
その場合は、ある祖父母Aさんの子供の箇所を「相続関係図2に別記」と書き、相続関係図2をAさんの子供の記載から始める・・・という風に進めて行きます。
◎戸籍簿にでてくる人ごとに、出生から死亡までの連続を確認しながら、作業する
正確な相続関係を証明する為には、そこに登場する人物の全ての戸籍を確認する必要があります。
そうしないと、離婚再婚すると戸籍上前の婚姻時の情報が無くなってしまう為、相続権を持った人物を見逃してしまう恐れがあるのです。
しかし、戸籍簿の記載は読みにくいので、正確に戸籍の連続を確認するのがなかなか難しいのです。
そこで、もれなく戸籍簿を確認する手段として、戸籍移動記録簿を使います。
以下は、戸籍の連続を記した、「戸籍移動記録簿」の見本です。
戸籍移動記録簿左側の日付の部分が、戸籍簿に入った日付と出た日付を記したものです。
これが連続していることを確認しながら戸籍簿を請求すれば、もれなく連続させることが出来ます。
尚、出生時の戸籍簿とは、戸籍が作られた日付より、出生日の方が遅い日付の戸籍簿のことです。
それを確認できるまで、戸籍を請求し続けます。
◎時間をおかずに、速やかに戸籍請求を続ける
3世代以上の相続関係を確定させる作業は、かなりの時間が必要となります。
ゆっくりやっていると半年から1年くらいかかる場合もあります。
そうすると、作業の途中で年配の方が亡くなって、相続関係が変わってしまうことがおきる恐れがあります。
その事態を防ぐため、とにかく速やかに作業を進める必要があります。
ある戸籍簿が役所から届いたら、その日のうちに次の戸籍請求を行うというペースで作業を進めてください。
◎昭和55年末以前に発生した相続は、兄弟姉妹の代襲に注意する
現在の民法では、相続人である兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は、その子供一代だけが代襲相続できる決まりです。
しかし、昭和55年末以前に発生した相続では、子供一代限りという制限が無く、兄弟姉妹であっても、孫・曾孫・・と代襲することが出来る決まりとなっていました。
その為、兄弟姉妹の子供が亡くなっている場合でも、現存する子孫を全員確認できるまで延々相続関係を調べる必要があります。
私は、800通の戸籍を調べ、170人の相続人を特定したことがあります。
これは、祖父名義の不動産の名義変更の為に依頼されて行ったのですが、昔はとにかく子供が多かったので、こういうことが起こります。
これを一般の方が自身で行うのは、ほぼ不可能と思います。
是非、専門家に依頼されることをお勧めします。